脳梗塞の後遺症の症状【嚥下障害・痺れ・認知症】とリハビリ
嚥下障害・痺れなど脳梗塞の後遺症とリハビリ
脳梗塞は、時に命にかかわるほどの病気です。
治療が遅れるほど命にかかわる可能性も高まりますが、治療が成功して命に別状が無くなっても「後遺症」の症状に悩まされることがあります。
後遺症がある場合、その症状を軽減するために「リハビリ」等も行う必要があります。
本記事では脳梗塞の後遺症の症状やリハビリ等についてお伝えしていきます。
脳梗塞の後遺症の症状【嚥下障害・痺れ・認知症】について
脳梗塞の後遺症の症状は「神経障害」「高次脳機能障害」「感情障害」の3つの症状に大別されます。
「神経障害」は、「麻痺」「嚥下障害」「視覚障害」「排尿障害」など、神経に障害を受けることで発症する症状です。
「高次脳機能障害」は、「記憶障害」「注意障害」「認知障害」といった、脳機能に基づく症状を呈します。
なお、ここで言う「認知障害」は疾病である「認知症」とは区別されます。
「感情障害」は、「うつ病」「夜間せん妄」「人格・精神面での変化」といった、感情に関する症状です。
こうした症状は、脳梗塞の「血流障害」によって脳の一部が壊死を起こし、その部分が担当していた機能が失われる事によって起こります。
なので、どういった症状を発症する可能性があるのかについては、脳梗塞が脳のどの部分に悪影響を及ぼしているかによって異なります。
言語障害について
脳梗塞や脳出血といった脳にダメージを与えてしまう病気になると、後遺症として言語障害になってしまうことがあります。
言語障害には失語症と構音障害がありますが、脳の運動性言語中枢にダメージが発生することで言葉がスムーズに出ない失語症になってしまいますし、感覚性言語中枢にダメージが発生すると他の人の言葉や文字が理解できない状態になり自分自身の言葉選びもうまくいかなくなる感覚性失語症になってしまうのです。
構音障害はうまくろれつが回らなくなりはっきりとした言葉を発せられなくなる障害で、失語症よりは幾分かマシな状態と言えます。
このように脳出血や脳梗塞等の脳にダメージが発生する病気になるとコミュニケーション能力が大きく低下してしまうので、このような症状が起こりにくい生活習慣を心がけることが大切となります。
リハビリについて
脳梗塞の後遺症は、血流障害による脳の一部が壊死したことによるものです。
壊死した脳細胞は、二度と元の状態に戻ることはありません。
なので、今までできていたことも、壊死した脳の部位によってはできなくなることがあり、その部分は元の完全な状態に戻すことは出来ません。
しかし、リハビリを行うことで可能な限り元の生活に近い状態まで近づける事はできます。
リハビリは、主に「急性期」「回復期」「維持期」の3つの段階に分かれています。
急性期は、寝たきりにならないようにすることが目的のリハビリです。
回復期は、歩行や排泄、食事といった日常生活で必要な行動の機能を取り戻すリハビリです。
維持期は、回復期のリハビリで取り戻した機能を維持するためのリハビリで、日常生活に復帰しながら平行して行われます。
嚥下障害になった時の対策について
脳梗塞の後遺症の一つに「嚥下障害」が挙げられます。
嚥下とは「飲み込む」ことであり、厳密には「食べたものを飲み込み、胃まで運ぶ一連の動作」になります。
脳梗塞では麻痺などの症状が生じるため、嚥下に必要な筋肉の動きにも障害を受けてしまいます。
最悪の場合、食べ物が気道に入り込み、肺にまで到達してそこで細菌を繁殖させて「誤嚥性肺炎」という病気を発症します。
肺炎は日本人の死因の中でもトップクラスの危険性を持つ病気であり、放置することは出来ません。
対策としては、リハビリを行うことです。
最初は「経管栄養」によって栄養の摂取を行い、食事に必要なリハビリを継続していくことになります。
どの程度まで回復するかについては、患者さん一人一人の状況にも大きく左右されます。
しびれの症状と対策について
脳梗塞の後遺症の一つとして、神経障害の中に「手足(身体)のしびれ」を生じることがあります。
これは脳梗塞の前兆である「一過性脳虚血」の症状でもあり、しびれの感じ方は人によって異なります(ビリビリするとか、感電している感覚と訴える人が多い)。
しびれを感じてしまうと、その部位の機能障害だけでなく、常にしびれを感じていることによってさまざまな事に対しての意欲を減衰させられてしまい、うつ病や食欲不振の原因にもなりかねません。
血行の悪さによるものであれば比較的治すのは容易なのですが、難治性の麻痺の場合だと簡単には改善できません。
治療のためには「脳神経外科的治療」「薬物療法」といった専門の治療が必要になります。
薬物療法の方が手軽なイメージが有りますが、これは奏功する人とそうでない人がはっきりと分かれます。
脳梗塞の後遺症のてんかんの対策について
脳梗塞の後遺症として「てんかん」を引き起こす可能性があります。
てんかんとは「発作を繰り返す脳疾患」であり、痙攣や意識障害が突然発生するのが主な症状ですが、それ以外の症状を呈するような時も存在します。
脳梗塞の後遺症としてのてんかんは「症候性てんかん」に分類されます(原因不明な場合は「難治性てんかん」)。
てんかん発作を起こすと、意識を失うことがほとんどです。
時と場合を選ばない(発作の原因になるような事象は存在しますが)ため、倒れこむことによって外傷を受けることになります。
てんかんの治療は、その7割が「抗てんかん剤」によって治療することが出来ます。
ただし、脳に問題が生じている場合には外科手術を必要とするケースも少なくありません。
どちらにしても、自然に治癒することはまずないと考えたほうが良いです。
認知症のリスクと予防について
脳梗塞では、その後遺症として「認知症」を患う可能性があります。
これは「脳血管性認知症」と呼ばれる部類です。
一度の脳梗塞で確実に認知症を患うということはなく、数度の再発を経て認知症が進行するというイメージのほうが近くなります。
脳血管性認知症の特徴としては「物忘れは多いが、理解力や判断力には問題がない」「記憶はできるが判断力に欠ける」など、さまざまな現れ方をします。
ゆえに「まだら認知症」とも呼ばれます。
一度低下した脳機能を元に戻すことは出来ません。
なので、予防する最良の方法は「脳梗塞」など脳血管障害を引き起こさないことになってしまいます。
一度、脳梗塞を患ってしまった場合は、再発の防止に努めることが、脳梗塞の後遺症としての認知症の予防に繋がることになります。
脳梗塞の後遺症として性格が変わることもある?
脳梗塞の後遺症として「性格」が変化することは、「高次脳機能障害」と「脳血管性認知症」が主な原因で発生します。
よく見られる変化としては「怒りっぽくなる」「注意力散漫でだらしなくなる」「些細な事で大笑いするようになる」「他人や物事に対して興味がなくなる」といった内容です。
実際に脳梗塞の後遺症で性格が変化する確率はそれなりに高く、前述の性格変化以外の内容も見受けられる可能性は十分にあります。
脳梗塞による性格の変化は、上記の高次脳機能障害がどれだけ回復するかによって、元の性格に戻る確率も変動します。
完全に元の性格に戻ることは難しいかもしれませんが、その場合には変化後の性格を本人と周囲がきちんと受け入れることで日常生活と社会への復帰を目指すことになります。
看護について
脳梗塞の後遺症には、家族や周囲の人のサポート、つまり「看護」が必要になります。
脳梗塞の後遺症は、処置が遅れるほどに重度の症状が発症する確率が上昇します。
処置が早ければそこまで重い後遺症は生じない可能性もありますが、それでも個人の努力だけで元の生活に戻ることは極めて難しいです。
身体的(神経的)な障害だけでなく、精神的な障害も数多く発症する可能性があり、患者一人でそれと向き合っていくことは極めて困難です。
急性期の治療が完了して回復期、維持期と日常生活に戻っていくにつれて、家族の手による看護とリハビリのサポートが重要なものになっていくことになります。
時には家族が想像していた以上の負担を強いられることもあるかもしれませんので、あらかじめその点については十分に理解し、医師のアドバイスをきちんと聞いた上で看護に臨みましょう。
脳梗塞の後遺症につきまして、次のサイトも参考にしてみて下さい。
回復期リハビリテーション.net 脳疾患・骨折・関節手術の後には
最後に
脳梗塞の後遺症は、日常生活に大きな悪影響を及ぼすものがほとんどです。
時には間接的に命にかかわるような症状が見受けられることも多く、リハビリや治療を継続することでそれらの症状による被害を最小限に抑えることが必要になります。
医師や家族のサポートがあってこそ、リハビリを継続できますので、可能な限りそうした重い後遺症を発症しないように早めに病院で診てもらう必要があります。
LEAVE A REPLY