糖尿病での合併症 発症時期と発症率は?予防方法は?
糖尿病における合併症と発症時期や発症率について
画像出典:糖尿病不安解消ラボ(URL:http://tounyou.jp/article/insulin.html)
糖尿病になると何が怖いのか?というと合併症です。
酷い場合は命に関わるのは勿論、足の切断という恐れもあります。
ここでは糖尿病になった場合の3大合併症などの発症率や発症時期、そして合併症を引き起こさない為の予防方法を中心に記載いたします。
糖尿病の3大合併症の症状
糖尿病になった場合に発症しやすい3大合併症といわれる症状があります。
その内容は次の通りです。
糖尿病性神経障害
初期症状としては足の先や足の裏に「痛み」や「しびれ」などの感覚が生じます。
手の指は、初期の段階では特に症状を感じないことが多く、感覚異常があらわれた時は既に進行していると考えられます。
これらの痛みや感覚異常は足に強く感じられることが多く、ものすごい痛みを感じ日常生活に支障を来たすこともあります。
睡眠時や安静時に足がつったり、手足が火照ったり、異常に冷たく感じたりといった症状が出ることもあります。
症状が進行すると立ちくらみや、異常な発汗、便秘、下痢、排尿障害など色々な症状が出てきたりします。
そして更に酷くなると痛みを感じにくくなるため、ちょっとした傷にも気づかず放置されてしまい、化膿してから気づくことがよくあります。
その結果、潰瘍や壊疽(えそ)が起こり足を切断しなければならなくなったりします。
基本的に糖尿病の合併症として起こった神経障害は自然に治りません。
便秘につきましては次のページをご参照ください。
糖尿病性腎症
糖尿病になり高血糖状q態が長期に及ぶと腎臓にある糸球体が正常に機能しなくなります。
糸球体は血液中の老廃物を「ろ過」して尿として排出できるよう働いています。
従いまして糸球体がうまく働かないと老廃物が体内に溜まってしまいます。
このことで、体に色々なダメージが加わるようになります。
このような状態を糖尿病性腎症と言います。
症状の出方は進度によって異なります。
進度は第一期から第五期までありますが、第一期、第二期では自覚症状はほとんどないです。
尿検査を行なわないと糖尿病性腎症になっていることが分かりません。
第三期になると、むくみや食欲不振、満腹感、ちょっと動いただけでの息切れや胸の苦しさなどの自覚症状を感じるようになります。
第四期・第五期では、顔色が悪い・筋肉の強直・つりやすい・筋肉や骨の痛み・手のしびれや痛み・易疲労感・吐き気・嘔吐・腹痛・発熱などの自覚症状があります。
第三期以降になると症状の進行を遅らせることはできても、良い状態に戻すことはできない怖い病気なので、糖尿病の方は十分体の管理を行ない腎症を起こさないよう心掛けることと、仮に腎症になったとしても二期までに発見できるよう注意しておく必要があります。
むくみやしびれに関しましては次のページをご参照ください。
糖尿病性網膜症【目の症状】
網膜は光や色を捕らえる機能がある重要な部分で、栄養を補給する為のたくさんの血管が通っています。
血糖値の高い状態が長く続くと、この血管が弱くなったり、一部が膨らんでコブ(動脈瘤)ができて出血したりします。
また細い血管が血栓で詰まったり、詰まることで血流が途絶えた部分に血液を流すために新しい血管(新生血管)ができてきたりします。
この新生血管は、即席でできたこともあり非常にもろく、ちょっとしたことで出血したりします。
糖尿病性網膜症は次の三段階で進んでいきます。
単純糖尿病網膜症
画像出典:一般財団法人 太田綜合病院
初期の段階で、自覚症状はほとんどありません。
みられる異常は、血管瘤(細い血管の壁が盛り上がる)や点状・斑状出血(小さな出血)です。
蛋白質や脂肪が血管から漏れ出て網膜にシミ(硬性白斑)ができることもあります。
このような症状はうまく血糖値をコントロールできれば改善する可能性もあります。
前増殖糖尿病網膜症
少し網膜症が進行した状態が前増殖糖尿病網膜症です。
細い網膜の血管が広い範囲で塞がってくると、網膜に酸素が十分行き渡らなくなります。
不足した酸素を供給するために新しい血管(新生血管)を作り始めようとします。
この段階ではかすみ目などの症状を自覚することが多いです。
ただほとんど自覚症状がない場合もあります。
この段階までくると、大概は網膜光凝固術(もうまくひかりぎょうこじゅつ)を行うことになります。
増殖糖尿病網膜症
画像出典:あなたの目元気ですか?
かなり進行し重症の状態です。
新生血管は伸びて網膜や硝子体に向かっていきます。
そして新生血管の壁はもろい為に破れ、硝子体に出血することがあります。
こうなると飛蚊症(ひぶんしょう)といって視野に黒い影やゴミの様なものが見えたり、急な視力低下を感じたりします。
また、増殖組織といわれる線維性の膜ができ、この膜が網膜を引っ張り網膜剥離を起こす場合があります。
この段階になると手術を必要とすることが多くなります。
ただ手術が成功しても日常生活を営むのに必要な視力にならない場合もあります。
またここまでくると血糖をコントロールしても、網膜症は進行していきます。
特に年齢が若いほど進行は早くなります。
それから網膜の血管がつまると、神経の酸素が欠乏します。
その酸欠状態が目の前方に波及してくると、虹彩や毛様体といった所に新生血管が出てきます。
この新生血管はシュレム管という目の中を循環する水(眼房水)の出口を塞いでしまいます。
すると眼房水が眼球の中に閉じこめられ、眼球内の圧力が上がります。
そうなると緑内障となり強い圧力がかかった神経が死滅し、視野が狭くなって最終的には失明します。
ただ最近では抗VEGF薬によって新生血管の活動を抑えるなど改善効果を上げているようです。
とは言え上記のことから増殖の段階まで進まないよう生活習慣をしっかり正し、血糖をコントロールする必要があります。
緑内障につきましては次のページをご参照ください。
3大合併症以外の糖尿病の合併症
3大合併症以外の糖尿病の合併症の中には次のようなものがあります。
動脈硬化
糖尿病になると(予備群の段階から)高血糖のため血液がドロドロになり動脈硬化がどんどん進行していきます。
すると全身の至るところで血管が詰まっていきます。
そうなると脳梗塞や脳卒中、心筋梗塞や狭心症、心不全など血管にまつわる症状がいつ起きてもおかしくない状態になります。
動脈硬化につきましては次のページをご参照ください。
歯周病
歯周病に最も関わりのある病気が糖尿病と言われています。
歯周病が見つかったのをきっかけに糖尿病が見つかるということも結構あるようです。
糖尿病になると免疫力が下がり細菌への抵抗力が弱まるので、歯周病になりやすいです。
白内障
水晶体(目のレンズ)が白くなります。
視界が白く濁り見辛くなります。
手術により改善は期待できます。
網膜症を合併した場合でも、白内障の手術をしてから、網膜症の治療を行うこともできます。
白内障につきましては次のページをご参照ください。
感染症
血糖値が高くなると、免疫力が下がりますので、細菌に対する抵抗力が落ちます。
皮膚化膿症、水虫、膀胱炎、腎盂炎、腎膿瘍、肺炎、結核、胆嚢炎、肝膿瘍といった感染症が起こったりします。
膀胱炎につきましては次のページをご参照ください。
閉塞性動脈硬化症
手や足の動脈において動脈硬化が起こり、血液の循環が悪くなり冷感やしびれ感、安静時に疼痛が起こったり歩行困難に陥いったりします。
更に悪くなると痛みで歩けなくなり、やがて潰瘍や壊疽(えそ)が起こり足を切断しなければならなくなることもあります。
糖尿病性壊疽
高血糖の血液はドロドロの為、細い毛細血管を通らなくなり、特に体の先端部分など体の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなります。
その結果、壊疽(えそ)が始まり、最悪の場合は足を切断しなければならなくなることもあります。
日々足の状態を観察しておくことが望まれます。
糖尿病の合併症の起こる順番と時期
3大合併症の起こる順番と時期についてになります。
あくまでも傾向であり必ずしもというものではありませんが、糖尿病を発病してから合併症の起こる順番と時期の傾向としては
①糖尿病性神経障害(0~5年)
②糖尿病性網膜症(7~8年)
③糖尿病性腎症(10~13年)
と一般的に言われています。
糖尿病における合併症の発症率は?
お医者さんから糖尿病と診断された患者さんの中で合併症があり、治療を受けている人の割合は約7割くらいのようです。
発症している合併症の多い順番としては目安になりますが、糖尿病性神経障害【約12%】糖尿病性腎症【約11%】糖尿病性網膜症【約10%】となっています。
予防方法について
【HbA1cの値が高くなるほど合併症が増える】と言われています。
HbA1c<6.5%が正常値ですがHbA1c >9%となるとかなり深刻な状態となります。
合併症を予防するには、血糖をコントロールすることが最も効果的です。
実際に血糖値を正常に近付けることで、糖尿病による合併症の発症・進行を予防できるということが大規模臨床試験で証明されています。
では血糖値を正常にコントロールする方法ですが、インスリン療法、薬物療法、運動療法、食事療法になります。
医療機関と相談しながらしっかり血糖をコントロールできるよう自己管理をしていけば合併症の発症を抑えることが十分可能です。
上記療法に関することの他、糖尿病につきましては次のページをご参照下さい。
糖尿病の合併症における「しめじ」と「えのき」とは?
糖尿病は今では多くの人がなる病気となったことで、合併症の覚え方まで通説となりつつあります。
その覚え方がこの「しめじ」と「えのき」となるのです。
まず、「しめじ」の「し」は神経症である糖尿病神経障害のことで、「め」は目の病気である糖尿病性網膜症、「じ」は腎臓の症状である糖尿病性腎症のことです。
そして「えのき」とは糖尿病が悪化した場合に併発する症状のことで、「え」は壊疽、「の」は「脳卒中」、「き」は虚血性心疾患となっております。
糖尿病を放置したまま治療を受けなかった場合、様々な合併症を併発する可能性が高まります。
たとえば、3年以上放置している人は末梢神経が正常に機能しなくなって毛細血管が詰まってしまい血液の流れが悪化する神経障害が出てしまいがちですし、網膜に張り巡らされている毛細血管が糖尿病によって傷つけられるので視力低下に繋がり、さらに放置すると腎臓が正常に機能しなくなって血液の濾過機能が低下して人工透析が必要になったりします。
これらの病気を「しめじ」として表しているのです。
糖尿病の合併症につきましては、次のサイトも参考にしてみて下さい。
公益社団法人 日本糖尿病協会 糖尿病の合併症
最後に
糖尿病の合併症には3大合併症と言われるものがある他、動脈硬化による血管にまつわる症状など様々あります。
3大合併症においてが起こる順番と時期は必ずそうと決まったものではありませんが、傾向として
①糖尿病性神経障害(0~5年)
②糖尿病性網膜症(7~8年)
③糖尿病性腎症(10~13年)
となっています。
合併症が進んでいくと命の危険がある他、つらい症状への対処ができなくなる恐れがあるので、糖尿病と診断された場合は合併症の予防と早期発見が非常に重要になります。
予防法としてはインスリン療法、薬物療法、運動療法、食事療法などがあります。
しっかり予防すれば合併症を抑えることは十分可能となっています。
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