過敏性腸症候群の診断と漢方や治療薬など治し方
過敏性腸症候群の診断チェック項目と漢方薬など改善方法について
過敏性腸症候群(IBS)の症状はちょっとしたことで、腹痛や腹部の不快感が出て下痢や便秘になったりします。
本記事では過敏性腸症候群の下痢型や便秘型と言われるものの診断チェック項目と漢方薬など治し方について触れたいと思います。
これらの症状をお持ちの方は、電車などトイレの無い場所やトイレの少ない飲食店、拘束される美容室などに長時間いられないなどの不自由さがあり、日常生活に制限が出て、精神的に苦痛を伴ったりするかと思います。
その精神的苦痛から開放されるきっかけになればと思います。
また過敏性腸症候群には「ガス型」もありますが、こちらについてはこのページ最下部の「最後に」部の前の項で触れています。
過敏性腸症候群では胃に痛みが出る?
過敏性腸症候群の人はストレスが多い傾向があると言われており、ストレスが溜まり過ぎることで胃痛を引き起こすことが考えられます。
また過敏性腸症候群は腸が激しくけいれんするようになりますので、腸の周りの臓器にも影響をもたらし胃痛に繋がってしまうこともあるようです。
場合によっては腰痛を訴える人もいるでしょう。
感情表現をあまり行わない人ほど発症しやすいと言われておりますが、日本では感情を飲みこんで抑える文化がありますので、発症しやすい国民性であると言えるかもしれません。
過敏性腸症候群の診断【チェック】基準
過敏性腸症候群の診断【チェック】基準は6ヶ月以上前から症状があって、過去3ヶ月の間、腹痛や腹部の不快感があると同時に、月に3日以上下痢・便秘などの便通異常があり、次の3項目のうち2項目以上該当した場合です。
①排便すると腹痛や腹部の不快感の症状が軽くなる
②腹痛や腹部の不快感の症状が発症した時に排便の回数に変化がある
③腹痛や腹部の不快感の症状が発症した時に便の形状に変化(軟便、下痢、粘液便など)がある
ただし、以下の病気や病態がないことが前提となります。
過去一年間での大きな体重減少(5%以上)、消化管出血、牛乳不耐症、クローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、大腸がん、消化管寄生虫病
がんに関することは次のページをご参照下さい。
過敏性腸症候群の原因は?
過敏性腸症候群では腸自体には特に異常はみつかりませんし、発症する原因も明確にはなっていません。
最近の研究では何かしらのストレスがかかるとストレスホルモンが脳の下垂体というところから出て、その影響を腸が受け異常性腸症候群の症状が出るという報告があります。
そして症状が出る毎に腸に対する不安が心理的に大きくなり、更に発症しやすくなるという悪循環に陥ってしまいます。
また、腸内環境も影響していると考えられています。
腸内に悪玉菌が増えると弱めのストレスでもより敏感に腸が反応し、腹痛や腹部の不快感といった症状が起きやすくなるということです。
その他、自律神経の働きの乱れも症状発症の原因になります。
自律神経は内臓の働きをコントロールしてくれています。
つまり、腸の働きに密接に関わっているので、自律神経が乱れると、腹痛や腹部の不快感といった症状が出やすくなります。
この過敏性腸症候群(IBS)は日本人の成人で、10~15%くらいの人がかかっていると言われています。
ちなみにIBSとは「irritable bowel syndrome」という英語の略です。
過敏性腸症候群の改善法について
漢方薬
漢方薬はその人の症状や体質によって合う合わないがあります。
従いまして、自分では判断せず、必ず医師の問診を受けた上で処方されたものを服用してください。
また漢方薬はあくまでも症状を抑えるものですので、過敏性腸症候群を引き起こした原因を取り除くものではありません。
勿論、漢方薬で症状が取り除かれることによって、不安が消えそのまま良い状態で定着する可能性もありますが、漢方薬を止めるとまた症状が再発することも十分考えられます。
ですので、漢方薬と並行して根本的なところの改善も進めていく必要があります。
根本的な改善については別途以下の「過敏性腸症候群の根本的な改善法について」の項に記載しています。
ここではよく処方される漢方薬を参考までにいくつか挙げておきたいと思います。
過敏性腸症候群(IBS)で用いられる漢方薬には次のようなものがあります。
便秘型の場合
桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)
鼻かぜの漢方薬である桂枝湯(桂皮・芍薬・生姜・大棗・甘草の5種薙の生薬からなっています)に“芍薬”を加えたものです。
芍薬には筋肉の緊張を和らげる効果と自然な腸の動きを取り戻す作用とがあって、便秘と下痢の何れにもよく使われます。
この桂枝加芍薬湯は、腹部膨満・しぶり腹・腹痛に効果の期待できる薬で、過敏性腸症候群(IBS)の症状に合っています。
桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)
腹部膨満感を伴う腹痛や便秘に用います。
普段から便秘がちで、体力のあまりない人に向いています。
小建中湯(しょうけんちゅうとう)
倦怠感や冷え、お腹の緊張が強いことによる腹痛のある方向けです。
下痢型の場合
半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
胃腸の働きを良くします。
食欲不振、胃もたれ、胸焼け、吐き気、お腹のゴロゴロ、下痢、消化不良などに効果が期待できます。
人参湯(ニンジントウ)
体力が低下ぎみで、胃腸の冷え、食欲不振、胃の停滞感、下痢など、胃腸機能が低下している人に効果が期待できます。
真武湯(しんぶとう)
新陳代謝が悪くなり、手足や腰部の冷え、強い倦怠感、下痢をし易い、動悸やめまいといった症状を伴う胃腸虚弱症の方に効果が期待できます。
便秘や下痢に関する内容につきましては次のページをご参照下さい。
治療薬
治療薬についても漢方薬同様、しっかりと医師に診断してもらい処方されたものを服用しましょう。
またこちらも根本改善ではないので、並行して過敏性腸症候群を引き起こしている根本原因を取り除くことも進めていきましょう。
根本的な改善については別途以下の「過敏性腸症候群の根本的な改善法について」の項に記載しています。
ここではご参考までに使用される治療薬のいくつかを挙げてみたいと思います。
便通を整える薬
高分子重合体(コロネル細粒など)・・・便に含まれる水分量を調節して、便をちょうどいい硬さに保たせる。
消化管運動調節薬・・・胃腸の働きを整え、便通の異常や腹痛を改善する。
整腸剤・・・腸内環境を整え、便通異常を改善する。
下痢を止める薬
腸管運動抑制薬・・・腸の運動を抑えて下痢を止める。
排便を促す薬
下剤・・・腸の運動を活発にしたり、便をやわらかくしたりする。
腹痛をやわらげる薬
抗コリン薬・・・腸の異常な運動を抑え、腹痛をやわらげる。
下痢や腹痛のことに関しては次のページをご参照下さい。
過敏性腸症候群の根本的な改善法について
過敏性腸症候群の原因はストレス、腸内環境や自律神経の乱れが関連していることから根本的な治し方としてはこれらの要素を改善することになります。
ストレスを取り除く
不安・恐怖、緊張、イライラ、怒り、不満、悲しみ、妬みなどのストレスを取り除くのは容易ではないかもしれませんが、出来る限り日々明るく楽しい気持ちで過ごせるよう心掛けます。
とりわけ過敏性腸症候群の方は不安・恐怖といった感情が起こりやすい傾向にありますが、そのような感情が湧き出てきた時は、気持ちを切り替えるよう心掛けましょう。
そして自分に振りかかっているマイナスと思われる出来事でも前向きに捉えたり、物事を楽観的に考えたり、几帳面になり過ぎないようにしたり、自分や他人に厳しくなり過ぎないよう努めたりといったことが大切です。
またアロマオイルを焚いたり、好きな音楽を聴いたりと、自分の好きなことに没頭するのも効果的です。
自律神経が乱れると免疫力が下がり、風邪をひきやすくなったりします。
風邪に関しましては次のページを参考にしてください。
食生活を整える
野菜を中心に全体的にバランス良く食べ、腸内環境を整えることが大切です。
1日2~3回の食事で腹7~8分目に留めておきましょう。
白砂糖など体を冷やす食べ物の摂り過ぎには注意しましょう。
世界保健機関では健康の為に摂取可能な砂糖の量は25g以下と提唱しています。
これはスプーンに6~7杯くらいの量です。
体を冷やす食べ物や温める食べ物については次のページをご参照下さい。
早寝早起きでしっかり睡眠を取る
睡眠不足は体に疲労が溜まることは勿論、しんどいので精神的ストレスにもなります。
早寝早起きで朝に太陽の光を浴びると自律神経が整う方向に働きます。
生活リズムをしっかり整えましょう。
適度な運動をする
適度な運動は自律神経を整えます。
1日30分から1時間くらいのウォーキングなどはおすすめです。
運動で筋肉が強くなると日頃の体温が上がりやすくなり、体温が高くなると内臓の働きも良くなり、腹痛や腹部の不快感といった症状が出にくくなることが期待できます。
自律神経の働きを整える
自律神経の働きが整っていると、内臓の働きも正常になります。
先に記載したストレス排除や朝日を浴びる、適度な運動の他、呼吸法などは自律神経の働きを整える方向に向かわせます。
自律神経に関して、以下のページもご参照下さい。
受診する病院について
過敏性腸症候群で受診する病院は他の病気や病態が無いかの検査も踏まえ、胃腸科や消化器内科のあるところが良いでしょう。
過敏性腸症候群と診断されたら治療法としては食事と運動、薬物による療法が基本になるようです。
胃腸風邪に関する内容につきましては次のページをご参照下さい。
過敏性腸症候群のガス型について
このページでは過敏性腸症候群の便秘型と下痢型について記載していますが、過敏性腸症候群にはお腹にガスが溜まってずっと張ったような状態になり、ガスが漏れているのでは?と思ってしまうようなガス型もあります。
ガス型については次のページをご参照下さい。
貧血に関する内容は次のページをご参照ください。
頻尿に関する内容は次のページをご参照ください。
過敏性腸症候群につきましては、次のサイトも参考にしてみて下さい。
日本消化器病学会ガイドライン 過敏性腸症候群(IBS)ガイドQ&A http://www.jsge.or.jp/guideline/disease/ibs.html
最後に
過敏性腸症候群の症状はちょっとしたことで、腹痛や腹部の不快感が出て下痢や便秘を伴う症状を言います。
この症状になると外出しづらくなるなど、日常生活に制限が出てきたりして自由でなくなってしまいます。
原因はストレスや腸内環境の悪化、自律神経の乱れなどがあります。
改善法としては漢方薬や治療薬がありますが、根本的にはストレスの排除、食事の見直しによる腸内環境の改善、自律神経の働きを整えるといったことを行なう必要があります。
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